Starwberry
Eighteen
X-RATED

 放課後に行われる委員会の定例会の最中に、クロからメールが来た。こっそり携帯をいじってメールの本文を開いてみれば『傘持ってる?』と一言だけ。折りたたみ傘なら、いつも鞄の中に入れてある。わたしは手慣れたブラインドタッチで『持ってるよ』と返信した。
 そうしてわたしがクロに返信してから間もなく、再びクロからメールが来た。今度は『俺傘ないから入れて。部室にいる』とある。いつもなら部活の真っ最中で、メールをやりとりできるような時間帯ではない。ひょっとしてもう部活が終わったのだろうか。珍しいこともあるもんだと思いながら、わたしは『わかった』とメールを返した。



 ――で、定例会が終わってから校庭の片隅にある部室棟へ来たのだが、見事な濡れネズミと化したわたしを見たクロは「はぁ?」と素っ頓狂な声を上げた。
 傘は、確かに持っていた。だけど、だけども、雨と風の威力が半端なかったのだ。最近話題のゲリラ豪雨というやつにわたしのチープな折りたたみ傘はまったく役に立たず、ものの数秒でひっくり返ってしまった。無残な姿になったわたしの折りたたみ傘を一瞥して、クロは色々諦めたようにため息を吐いた。
 クロが貸してくれたスポーツタオルで全身を拭いても、服が水を吸い込んでしまっているからじっとりと貼りつくような不快感が残っている。それを少しでも軽くしようとタオルでシャツを擦りながら、わたしはクロに尋ねた。

「ねぇクロ? 今日部活どうしたの?」

 体育館の照明点検だとかで、体育館が使用禁止になっているところまでは知っている。だから今日は外でロードワークをするとか言っていたはずだ。

「体育館使えなくて、外でロードワークしてたらこの雨だ。止みそうにねぇし、来週試合あるから風邪引かれても困るって直井さんが終わりにしてくれたんだよ」

 なるほど。それで、傘を忘れたクロはここでわたしの傘をあてにして待っていたということか。

「でもその傘じゃ帰れねぇだろ……。仕方ないな、雨が落ち着くまで待つか」

 そう言いながら、なぜかクロは部室の入り口を施錠した。それだけでなく、着替える時の目隠しに使うカーテンも引いていくではないか。

、でかい声出して騒がないって約束できる?」

「えっ? う、うん? 騒がないけど?」

 クロの行動と言葉がいまいち理解できず、戸惑いながら返事をした。
 カーテンを完全に閉める直前、クロは隙間からそっと外の様子をうかがう。他の運動部も校舎内に退避したのか、それともクロ達と同じように早上がりになったのかは分からないけど、どしゃ降りの雨の中に人影などない。それでも用心するように外を確認してから、クロはカーテンを閉めた。

「あっため合おうか」

 あっため合う……、温め合う……、温め合う、どうやって? 抱きしめ合って? あー……、ああ……そういうことか……。
 ひとりで連想ゲームを繰り返して、やっとクロの言ってることが分かった。
 そりゃあ雨に濡れて寒いけど、ねぇ……。どちらかといえば否定的な目付きでわたしはクロを見つめる。

「さっきから透けててバッチリ見えてるっつーの」

 指摘され、慌てて下着が透けている胸元を隠すがもう遅い。

「動き足りなくてムラムラしてんの、俺。その状態で透けブラとか、健全な男子高校生舐めんじゃねぇぞ」

「うわ、開き直った」

「それと、濡れた服着てたら風邪引くだろうが」

「下心丸出しで言わないでよ」

 外は雨。ここは密室。クロとふたりきり。クロが言う通り、濡れた服が体温を奪って、寒い。
 部室の真ん中に置いてある長椅子に腰掛けたクロが、目でわたしを誘っている。クロの腕の中へ行ってしまえば、きっと簡単に温かくなるのだろう。
 ほんの一瞬でも気持ちが揺らいでしまえば、あっという間に《キモチイイ》方へと流されていく。クロの隣に座ると、ぎしっと長椅子が軋んだ。

、こっち向けって」

 椅子を跨ぐように座り直され、わたしはクロと向かい合う。もう既に事は始まっており、クロは未だ濡れたままのわたしのシャツを脱がせにかかった。ボタンを外され、肌にまとわりつく湿った不快感が少しずつ剥がれていく。
 ひとまずシャツは比較的汚れの少ない場所へと放られ、クロは次に自分の服を脱ぎ始めた。部活があるから一度着替えて、雨で中止になったからまた制服に着替えて、それをまた脱ぐ。忙しい奴だなぁ。クロをぼんやり眺めながらそう思った。
 わたしがぼんやりしているうちに、クロはもう上半身裸になっていて、じりっとわたしとの間を詰めてきた。背中にクロの片手が回り、抱き寄せられるのと同時に下着のホックを外される。ホックが外れた勢いで下着がずれ、肌と下着の隙間にひんやりした外気が入り込み、わたしは思わず「寒い」と漏らした。

「寒いんならもっとくっつけ」

 シャツ同様に濡れた下着も脱がされ、上は丸裸にされた。晒される前にクロの腕の中へと引き込まれ、胸板でやんわりと胸を押し潰される。すべすべしてるんだけども、どこか湿っぽい感じもする、人の肌。ほとんど同じ体温を分け合っているだけなのに無性に温かい。早くも温もりに身を委ねているわたしに、容赦なくクロが噛みついた。

「クロ、噛んじゃ……、んっ」

「見えないところにするからヘーキだって」

 そうじゃない。そういう意味じゃない。痕が付くからダメなんじゃなくて、“噛む”という行為そのものが嫌なのに。
 噛み癖のあるクロは、触ったり揉んだりするよりも噛むほうが好きらしい。とはいっても甘噛みのレベルだからあまり痛くはないけど、点々と赤い痕は残るし、それに噛むのってなんかアブノーマルっぽいし……。

「手ェ上げて」

「……また変なとこ噛む……」

 服を着ていれば見えないところ、例えば二の腕の内側とか、胸元とか、わき腹とか、そんなところを重点的にクロは噛んでくる。わたしにとっては憎きぜい肉が溜まりやすい場所だから、あんまりがぶがぶ噛まれるとたるんでいるのがバレそうで、そっちの方にドキドキしてしまう。
 ……実際、クロに言われたことがあるから余計に。今みたくエッチの最中に、「……、お前この二の腕はヤバいだろ」って。幼馴染時代も合わせて十年近く付き合いのあるクロと、初めて全裸で喧嘩したなぁ、そういえば……。
 そうやって油断している時に、不意打ちで胸の先を弄られ声が漏れる。なまじクロの甘噛みに慣れてしまったぶん、普通に触られるだけでも過剰に反応してしまう。逃げようにもわたしはクロの腕の中に閉じ込められているから、せいぜい腰を引くのがいいところだ。
 わしっと、大きな手でわたしの胸を掴んでクロが言う。

「――前々から思ってたんだけどさぁ、って背のわりに胸大きいよな? 栄養全部こっちに行ったのか?」

「言うほど、背……低くないし……」

「そうかぁ? 俺はお前とチューするの結構しんどいぞ」

「クロが大きすぎるの!」

 身長150センチ台前半のわたしと、187センチのクロ。例えばわたしが研磨や夜久君と並べば特段小さい印象にはならないけど、大柄なクロと並べば小さく見えるのも仕方ない。ていうか、クロと並べばだいたいの人が小さく見えるって。
 キスしやすい身長差は15センチというのは有名な話。それがベストだと言うのなら、わたしは172センチまで背を伸ばさなければならない。竹馬にでも乗れってか? 立ったままだとキスし難いとかで、クロはよくわたしを膝に乗せてキスしてくる。その気がなくてもなぜかキスが濃厚になってしまう、仕組まれたような体勢だ。

「あーやっぱりに合わせると首痛ぇ」

 そんなふうにブツクサ言いながらも、クロはわたしを膝に乗せて、それでもまだ少し残る身長差には背中を丸めて対応してくれる。一回キスして、もう一回、もう一回と、徐々にキスとキスの間隔が短くなっていく。

「ん、ふ……クロぉ、ちゅ……、んっ、ちゅう……」

 唇を押し付け合うだけでは足りなくて、お互い口を開けて舌を舐り合う。
キスについてはクロよりもわたしの方が強欲で、自分から腕をクロの首に絡めて積極的にしてしまう。だって、キスしてると胸の中が「クロのこと好き! 大好き!」って気持ちでいっぱいになるから。
 裸の身体をクロにくっ付けて、何度もキスを繰り返した。

「あんまエロいことしてると加減できねぇぞ……、っと……」

「わ、わっ? クロ?」

 ぐるりと視界が回って、背中が長椅子の座面に触れた。

「すげーよな、仰向けになってもこのボリュームとか」

 軽々とわたしを押し倒したクロは、品定めでもするかのようにわたしの胸を揉みしだいている。
 ところで、なんだかとっても恥ずかしい格好にされているのは気のせいだろうか。膝を立てて脚を開いた状態で、脚の間にクロ。スカートの中が見えそうだから手で押さえると胸を寄せてしまい、ますます強調するポーズとなってしまった。

「何? 誘ってんの?」

「ち、違う……、スカート、めくれちゃうから……」

「ふーん、……あ、イチゴ柄」

 わたしがスカートを押さえたところで、クロからは簡単に中が見えてしまう。わたしの、お気に入りのイチゴ柄。
 ちなみに言うと上もお揃いだったんだけど、そっちは大して興味なさげに放られてしまった。ところがこっちには興味津津のようで、クロはますますわたしの脚を左右に広げてくる。やだやだって首を振りながら、必死にスカートを押さえて隠そうとするがとても敵いそうにない。
 広げたわたしの脚が閉じないように押さえつけながら、クロは身体を寝かせてわたしの胸元に顔を寄せる。通称“ネコ”の音駒高校バレー部にいるからだろうか、クロの仕草ひとつひとつがすごく猫っぽい。しなやかで、睨みつけてきて、憎らしいけど同時にいとおしい。
 クロの吐き出す息が胸の先端にかかる。熱っぽいその息に、乳首がぴくんと反応した。吐息の温度にすら応えてしまうのに、そこに舌が絡めばどうなるかは明らかだ。

「……っあ、くすぐったい、よっ……クロぉ」

 舌の柔らかさと、ぬるぬるした感触。くすぐったくて背中がむずむずする。
 大したことをしなくても硬くなってしまうとても素直な乳首を、クロの指と舌が交互に弄ぶ。指でも舌でも、やってることは変わらないけども伝わるものがまるで違う。ぴりぴりした弱い痛みを与えて、これ以上に硬く膨らせようとしてくる指先と、反対に膨れた乳首を優しい感触で可愛がる舌。クロは指と舌とを器用に使い分けていた。
 つんと起った乳首は乳房の中に押し込まれても、またすぐにぴょんと顔を出す。クロはそれが面白いのか、指先でぐりぐり押してくるからちょっと痛い。でも、嫌いな痛みじゃない。クロの甘噛みと同じで、だんだんと効いてきて、癖になってしまう。気持ち良くって、頬が緩む。

「クロ、……あう、きもち、い……」

 そうやって胸の内を明かすと、クロが口元だけで笑った。
 クロが動くと時折擦れる、スラックスの中心。布地の下で硬く、熱くなっているのが感じ取れる。そしてクロと同様に、わたしの脚の間も熱くとろけそうになっていた。
 頃合いをはかってクロが下着の上から指をあてがい具合を確かめる。脚を広げているのも相まって、わたしのそこはだらしなくぱっくりと開いていた。

「ぬるぬる……、イチゴパンツ透けてるんじゃねぇの?」

「あ……、だめ、汚れちゃうから……、ぬ、脱がし……て……」

 言っても聞かず、クロはそのまま指を下着に擦り付ける。下着が濡れたそこを撫でるたびにくちゅくちゅ音がした。お気に入りのイチゴ柄が汚れていくような気がして、わたしは意地悪いクロを睨むが、性悪ネコはただ笑うだけ。

「イチゴ柄とか可愛いじゃん。でもってその可愛いのが透けてるとか、エロくて良いよな」

「……鉄朗君のへんたーい」

「男は皆変態だ文句あっか」

 うわ、言い切った……。
 当のクロは呆れているわたしをからかうように、下着のきわから指を押し込んできた。その指は迷うことなく入口へ向かい、ナカへと進んでいく。
 わたしのあそこは今更言い訳なんかできないくらいにドロドロのぬるぬるで、クロの指なんか容易く飲み込んでしまう。奥まで指を押し込まれ、お腹の内側を擦られる。あう、と声が漏れた。

「その変態で、喘いで、啼いて、ココぐっちゃぐちゃにしてるのは誰だよ? なぁ?」

「ん……ふ、あッ……、やっ、クロ、指やだ……。てつろの……、鉄朗の、欲しい……」

「……こういう時だけ名前で呼ぶとか、あざといヤツ」

 あざとくて結構。だって、狙ってやっているのだから。
 クロのことをドキドキさせてやりたくて、ここぞって時には「鉄朗」と呼ぶことにしているのだ。呼びなれないせいで、実は自分もドキドキしているのは内緒だけど。

、付けて」

 クロに引き起こされ、小さな正方形の包みを渡された。ベルトとスラックスの前立ては緩めてあるが、そこから先はやれ、ということらしい。
 一旦包みを口で咥えて、クロの下着をずらす。すっかり準備が整っている、上を向いたクロのもの。両手でやんわり握って、おまけで先端にキスをしてみた。すぼまった先っぽを濡らすカウパーが少ししょっぱい。

「お前ッ――、だって十分変態じゃねぇか!」

 そうかもね、と舌で先端を舐めながら答えた。
 包みを開けて、ゆっくりとクロのものにコンドームを被せていく。わたしの気持ちは最高潮で、ひどく物欲しそうな目になってしまう。
 結局のところ、クロもわたしも変態ですけべなのかもしれない。だってわたし達は思春期真っ盛りなんだから。

「……ん、はい、付けたよ」

「じゃ上乗って、……の前にパンツか」

 膝立ちになったわたしのスカートの中に両手を入れ、するすると下着を引き下げる。思った通り、お気に入りの下着は雨とは違うもので濡れていた。
 下着を脚から抜かれ、ついでにスカートも脱がされる。残っているのはハイソックスとローファーだけ。それはわたし達にギリギリ残った、“ここは学校”という僅かな理性を表しているようだ。雨の音はまだ止まない。あと、もう少しだけ降り続いて欲しいな。――独善なお願いごとをしながら、わたしは腰を落としていく。
 ひだを割って、少しずつクロのものが中へと入ってきた。

「……ッ、あ、あう……っく、すご、熱い、よぉ……」

 ぞくぞく全身は震え、思わず涙さえも浮かんでしまう。それほどに気持ち良くて堪らない。腰を落として、ただクロのものを受け入れただけなのに。
 息を吐くと、連動してナカがひくっと動いた。ほんの少し当たる場所がずれただけでも大きな刺激になる。クロにしがみ付いたまま、奥のところへクロのものの先端を擦りつけるようにもぞもぞ腰を揺らしていく。

「てつろの、きもち、い……、っは、はぁ……」

「腰使うの随分上手くなったじゃねぇか」

「だって、こう、すると……っん、気持ち、良ッ、から……」

「『騎乗位なんてヤダー』とか言ってた頃が懐かしく感じるなァ。彼女がエロくて結構、結構」

 クロは呑気に後ろ手をついて、ニヤニヤ笑ってわたしを眺めている。

「足りない、って言ったらもっと激しく動いてくれんの?」

 わたしはゆるゆるとした動きが好き。だけどもクロは、ガツガツと、打ちつけるような動きの方が好き。今にもイってしまいそうなわたしと違って、クロはまだまだ余裕があるんだろう。
 クロに煽られ、腰を上下させようと下肢に力を入れてはみるが、わずかにお尻が浮くだけ。クロを支えにして幾度か頑張ってみるがなかなかどうして上手くいかない。このじれったい動きは自分がしているというのに、それにさえ酔ってしまって腰が砕けそうになる。
 無理だよ、とクロに目で訴えたら、「もうちょっと頑張れよな」って頬にキスされた。
 それから腰を掴まれ、一気に、ぐんっと突き上げられる。

「んうッ」

 突き上げるのと同時に、根元がクリトリスのところに当たった。それは意図してやったことのようで、クロは何度も何度も、ナカとクリトリス両方に刺激を与えてくる。

「だめ、てつろ、鉄朗、も……、イっちゃ、イっちゃうから、……あっ、あう」

 ずぶっ、ずぶっと、下から身体全体を跳ね上げる勢いの動きに、いよいよ意識が朦朧としてくる。このままクロに貫かれそうで、必死に縋って、胸板に自分の胸を押し付けて。しかもこのタイミングでまた噛み癖を発揮してくるから、身体中のどこにも安堵できる部位がない。文字通りに全身をクロに委ねたわたしは、びくびく震えながら達してしまった。
 少し遅れて、クロも揺さぶりを止め、フーっと長く息を吐き出す。それから腰をずらして、射精を済ませたものをわたしのナカから引き出した。引き抜かれる瞬間に、やんわりと内側を撫でられる。この感覚が好きと言ったら、クロはどんな反応をするだろうか。今度、言ってみようかな。

「あったまったか?」

「ん……、熱いくらい」

「雨もおさまったみてぇだな」

 そう言われて耳を澄ましてみれば、外はだいぶ静かになっていた。
 帰ろうか。そんな空気になって、どちらともなく服装を整え始めたのだが、濡れた服をただ放っておいてもそう簡単に乾くわけがない。ブラウスも下着も生ぬるく湿ったままで、もう一度それを着るのはためらわれる。
 かといって全裸でいるわけにもいかず、結局わたしはクロのジャージを着て帰ることになった。被害の少なかったスカートとパンツは穿いて、上はクロのジャージだけ。ぶかぶかだから身体の線は目立たないけど、それでも下着を着けていない緊張感は拭えない。
 事後の余韻を引きずっているのも相まって、ふわふわと落ち付かない足取りでなんとか家に帰りつくと、クロが当然のように上がり込んできたではないか。

「まだちょっと動き足りないから、――なぁ」

「着替えたいから帰ってよ……。ジャージは洗って返すから……」

「いいじゃん、着替えるついでで」

 にじり寄ってきたクロに追い詰められ、ジャージを脱がされ、下も脱がされ、今度はベッドに押し倒される。わたしはこの性悪エロ黒猫と第二ラウンドにもつれ込む羽目になったのだった。